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中国料理「香」

Chinese restaurant "Xiang"

用途:レストラン

専有面積:71.2 ㎡

階数:1階(3階建て中)

構造:S造

施工:田中工務店

照明計画:杉尾篤照明設計事務所

​ロゴ:paragram / 赤井佑輔

​写真:長谷川健太

 京都府京田辺市の松井山手駅前に新しくオープンしたショッピングモールの中の中国料理店の内装計画。

 モール自体のデザインコンセプトは「街の庭」であった。モールの通り庭は街との連続が意識されたものであり、やがて緑が生い茂って森のような場所になり「人とまちを森がつなげる」ことが意図されている。

 通り庭と直結しているこの店を、シェフがつくる美味しい料理をより一層引き立てる、香辛料を効かせた本格的な中国料理の良き背景として「香りが充満する洞窟」になるよう計画した。 

 洞窟にくびれた奥行きを持たせることによって、通りがかりの人がついつい引き込まれてしまう開かれた店構えと、中に入ると落ち着きがあり包み込まれるような空間との両立を目指した。通り庭と街と連続させるために、A工事の画一的なガラスファサードの奥にもう1つのファサードをつくり、その境界を曖昧にしている。洞窟部分は全て二次元の多角形で構成しており、一見複雑に見える形態でも幾何学的に整理することによって、実際に工事に入れる期間が極端に短いテナント工事において下地の事前準備を可能にし、煩雑に見えがちな空調換気のガラリなどの設備もそのグリッド内に納めて整頓している。 

 店名の「香」は読んで字の如く「香り」という意味を持っている。「香り」というものからは、温かさや湯気がイメージされるだろう。そこで、軽く、薄く、柔らかく、多孔質で空気を含む「和紙」にそのイメージを重ね合わせた。洞窟部分は一般的に想像されるような土や石等の重たい素材ではなく和紙を採用し、その中でも厚みや肌理が異なるものを数種類(全て手作りの紙なので同種類の中でも完全に同じものはなく斑がある)混ぜて1枚1枚貼り上げることで斑を出し「香り」を具象化しようと試みた。その他の部分も墨モルタルや板目の木材を使うことで斑感をつけている。そして、和紙の裏に照明を仕込むことで、その物性をよりわかりやすく現している。

 このように和紙を四角いグリッド状に少し重ね合わせる貼り方はごく一般的なものではあるが、それをボールトと合わせると組積造のような雰囲気を帯び、身を預けられそうな安心感と揺れ動きそうな軽やかさが同居した不思議な洞窟空間が生まれた。