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妙善寺本堂

Myozenji main temple

所在地:埼玉県春日部市飯沼1

主用途:宗教施設(寺院)

設計:PERSIMMON HILLS architects

担当:柿木佑介、廣岡周平、池谷浩樹

構造設計:オーノJAPAN

照明設計:杉尾篤照明設計事務所

施工:(株)榊住建

構造:木造

階数:地上1階

敷地面積:558.38㎡

建築面積:198.72㎡(既存計:346.71㎡)

延床面積:182.60㎡(既存計:382.49㎡)

設計:2021年4月~2022年9月

工事:2022年10月~2023年5月

竣工:2023年5月

写真:田中克昌

埼玉県春日部市、妙善寺の本堂を建て直す計画です。 現代では檀家の数が減っていく中で、いまだ関係を持っていなかった地域の住民に対して新しく門戸を開いていくため、寺院建築が持つ閉鎖的な印象を払拭し、機能的にも空間的にも連携をとっていけるあり方を提案しました。寺院建築は和小屋によって屋根の自由度を上げ、照り屋根を作ってきた歴史があり、壁や少ない開口部によって、耐震性と光を限定することによる本尊への象徴性をもたらしてきました。一方で日常生活において宗教に対する意識が薄くなる中、その暗く、閉ざされた印象が敷居の高さを生んでいます。僕らが提案したのは現代的な素材や構法によって、今までの宗教建築の形としての連続しながらも、新しいイメージや使い方を喚起する空間です。

南側の敷地では参道からのアプローチと北側の旧街道からの2つのアプローチがあり、裏表両面に対して玄関を持ち、通り抜けられる風通しの良いお寺としました。10m角の平面を持つ本堂を様々な活動を受け止めるため、内部に柱を落とさない構造計画としました。四隅を隅切した斜めの耐力壁によって耐震要素を持たせながら、10m角のロの字の梁と、小屋組を受ける8.19m角のロの字の梁で構成しています。和小屋形式の柱梁+束+垂木による構成を踏襲し、束柱梁として桧CLT60×420㎜を341㎜間隔で配置し、湾曲集成材による曲げ垂木によって屋根を構成しています。一般的な和小屋では梁が吹き抜け空間を横断しさらに水平剛性を確保するために火打ち梁で補強されます。通常、吹き抜け空間となる部分の水平剛性が極端に弱くなりますが、今回は小屋梁レベル付近に下屋屋根が4方向に接続していることで水平剛性がとれ、火打ち梁等の必要ない計画となります。一般的なお寺の屋根架構では、照り屋根をつくるための加工、下地、2次部材などが屋根裏に多数配置されていることから、架構の複雑さによる施工の難易度があがり、かつそれらを隠すための天井が張られています。表と裏をつくってしまう屋根形状に対して、今回の計画では細かく配置したCLTと曲げ垂木のシンプルな架構によって、屋根の表と裏が一致する架構が現れ、気積の大きな、明るく開放感のあるお堂空間が実現できました。門型のCLTフレームは曲線状に配置されることで本尊への集中線的効果を持ちながら、従来の和小屋の寺院建築にはない妻面の大きなハイサイドライトによって明るく軽やかな本堂を生み出しています。湾曲集成材を垂木に用いることで本来の寺院建築では屋根の端部を照る形だったものが、現代の構法によってもっとのびやかに迎え入れる形を生んでいます。寺院建築が檀家のための祈りの空間だけでなく、地域住民にとっても活動の場となる新しい在り方です。本堂の斜め壁は、仏画の絵解をしたり、プロジェクターで投影して映画を見たり、活動の起点となります。無柱で段差のない本堂は平面的に余白が十分にあるため、コンサートを行ったり、地域活動の舞台として本堂を使用することができます。 北側の御斎室によって冠婚葬祭への対応がしやすくなるとともに、付随する給湯室で飲食店の営業許可を取れる仕様とし、シェアキッチンとして運用でき、地域住民の方が新しいチャレンジを行うことも可能です。もうすでに竣工してから宗教的な行事だけでなく、シェアキッチンでのチャレンジショップや地域のイベントが行われています。官が持ちうる公共性と別の共同性がこの大きな屋根の下で育まれ、人が集うことの豊かさを次の時代へつないでいってほしい。

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