上有住地区公民館
Kamiarisu community center
用途:公民館・図書館
敷地面積:3796.16㎡
建築面積:670.75㎡
延床面積:521.67㎡
階数:地上1階
構造:木造
構造設計:井上健一構造設計事務所
設備設計:ZO設計室
ランドスケープデザイン:stgk
照明設計:杉尾篤照明設計事務所
サイン計画:デザインと
施工:佐賀組・坂井建設特定共同企業体
写真:中村絵
岩手県気仙郡住田町、公民館の建て替え計画である。住田町は北上川と岩手県沿岸部に挟まれた山間部にある林業が基幹産業の町であり、町内公共施設を木造で建て替える取り組みを行ってきた。このプロジェクトは4つ目の小中規模木造公共施設事業である。小中規模木造施設の着工数は住宅に比べ未だ少なく、町内の集成材工場は大断面集成材を主力製品にしづらい背景がある。この建築は「一品物」の大断面集成材ではなく、住宅の延長線上にある部材を多用することで、無理なく中大規模木造の実現可能性を示すものであり、持続可能な木材の循環システムを担保する上で極めて再現性の高いモデルケースである。
公民館の隣には町民から愛されてきた民俗資料館がある。この建築は旧小学校であり、気仙大工と呼ばれる首都圏でも寺社仏閣を手掛けた地元の大工がつくった地域の誇りである。建て替え決定時には住民の要望で曳家・保存が決まったが、曳家された位置は旧公民館の裏側のような場所で、資料館が大事に見えない状況となっており、この資料館の存在を際出せるのが配置計画の始まりとなった。
資料館の配置軸と敷地の地形軸から新公民館の外形は導かれ、資料館の前広場でありつつ、地形と新しい公民館で囲われた広場とも感じられるような屋外空間を生んだ。また、その2軸の交点を半屋外の三角土間とし、エントランスであり、広場での活動を支える空間とした。
構造は三角土間とホールの境を棟とした大きな切妻屋根とし、資料館へ下がっていく軒が民俗資料館の象徴性を高めている。緩勾配の屋根は周囲の山並みとも街並みとも呼応した風景を生み出している。
気仙大工からの高い技術力を継手で見せたり、町内の様々な種類の羽目板や、敷地でとれた河原丸石を舗装や壁に使い、内外に多様な地域の技術や素材をまとうことで、町の資源との連関を強めていく在り方を模索した。建築単体を設計する中に様々な関係性を継ぐことを目指している。